かく語りき楽日にて

2014年2月14日更新

小屋、または劇場で舞台作品が上演される期間中、ターニングポイントとなる日があります。初日・二日目・中日・楽日です。

初日は観客と対面する本番最初の日で、ご想像の通り、多くの役者・照明さん音響さんを始めとしてスタッフさんも緊張のピーク。どれだけ稽古やリハーサルを重ねても、何が起きるか分からないのが舞台初日であります。
多くの場合、その緊張感から生まれたなかなかの芝居の出来や、思わぬ高評価に、少し……もしくは結構調子に乗る日です。

中日は「ちゅうにち」ではなく「なかび」。公演期間の真ん中にさしかかると、よく演出さんが「中だるみしないように、気を引き締めて」と、小学校の校長先生が、遠足はお家に帰るまでが云々と述べる響きに近い釘を刺します。何故そんな子供に言うような事を、大の大人に言うのか。
それは言わざるを得ないから。
初日の緊張感がすっかり薄れてしまう演者、芝居に飽きてしまう演者もいると言う事です。

しかし、中だるみより問題なのは二日目、口にするのも嫌なのでさささっと。「二日目落ち」という言葉があり、簡単に申しますと、初日で調子に乗った演者が、翌日も観客ウケを狙ってえらい滑る確率が高い、と言う本当に恐ろしい日です。
私自身ではないのですが、同じ板でだだ滑る様子を目の当たりにして以来、二日目……忌まわしい呪文のよう、考えるだけで寒気がします。

楽日は千秋楽と同義語で、最終公演日を指し、相撲競技とも意味は同じですが、舞台の楽日は特別です。芝居中の悪戯やサプライズが慣例化していて、何が起こるかわかりません。
それは作品に支障を来たさぬ程度(※秘密の3Ch・楽日の罠)に仕掛けられ、同じ板の演者も驚きますが、観客も通常版では観られない、楽日限定芝居が観られるからと、一度ご観劇下さって、また楽日に来られる方もいらっしゃいます。すったもんだの公演最終日は祭りか花火か、ドカンと打ち上げて終わろう、そういった具合です。

かく言う私は、最後だからと言ってアドリブや悪戯など出来ません。せいぜい、通常公演では汚さないよう気を配る衣装を「もう楽(日)だからいいや」と、鼻水垂れたから袖で拭いちゃえと言う程度で、全くもって小心者な楽日です。

もしいつか、諸兄が芝居をご覧になる機会がございましたら、何日目かを意識されても、違った側からの観劇をもまた楽しんで頂けるかもしれません。
少し間抜けな役者の話ですが、お心の隅にでも留め置いて頂けたらと思います。

楽日のそれは、演劇が現在の形になった新劇以前、歌舞伎や能の伝統舞台の千秋楽に行われていたと言う事、舞台の最後は花火のようにと言う「打ち上げ」の意味も当時からですとか。
はたらくじんサイトにて、かく語らせて頂き始めた事を切っ掛けに、今まで気がつかなかった事も知るに至り、勉強させて頂きました、今までの応援とご指導をありがとうございます。

楽日のお客さんが帰られた後の舞台は、瞬く間に解体され、さっきまで恋人だった人も家族だった人も、もう違う人です。
跡形もなくなったステージを見ていると稽古から劇中の喧噪も、まるで始めから何事もなかったようです。
「役者の仕事」は、舞台が終われば、触ることも見ることも出来ないけれど、観客の心に確かに残る一瞬の打ち上げ花火という芝居作品を、楽しき最後のその日まで貫き演じ切って、お観せする事なのかもと。

などとかく語って参りましたこれらは全て、私と言うたかが一役者の持論でございます。拙い点も可笑しな箇所も、何卒笑い飛ばしてご容赦の程を。

サイト休止にあたり、少しばかりのインフォメーションと、未だ稚拙な文章ながら連載最後の筆者からのご挨拶はこちらで(※秘密の3Ch)
 
 
追伸

先日、父の車で街中を走っておりますと、ちょいちょい建物などを指差し「あのビルうちが工事したんだ」「あのホテルもうちがやった」そう嬉しそうに話し出します。
勿論ゼネコンさんなどではない一下請け業社ですが、でも懐かしそうに、誇らしそうに。

立派な佇まいのビルを見て「いい仕事したんだね」私も心からそう思います。祭りや花火じゃなくても、形として残り、後でゆっくりと、自分のした仕事を眺められるのもいいなあと。

でもいつも忘れないようにと、思うことがあります。以前テレビのニュースで「一触即発で開戦か」「海兵隊員、民間人死亡」等といった緊迫した様子を報じていました。飛び交う砲弾の爆撃音が響く映像と共に。

建築業を営む以前、職業軍人だった父が言いました
「憲兵の前は、あの島じゃなくて、もっと奥の一番最前線の島に二年いたんだ」
志願し海兵隊員として最前線を務めあげたと言う事を、なのか、誇らしそうに、懐かしそうに。

母と生き別れ父と死別し、少年だった父は生きるべく仕事を求め入隊し、海兵隊員となったからには最前線に行くことが職務、としか思わなかったとの事。
いい仕事を、と言うより「生きてて良かったね」です。むしろ「生きててありがとう」ですか。

軍や兵隊さんがいるから平和なのか、それがあるから平和じゃないのか、日本で育った私には日本国外の事情は見当がつかず、とても頑張った人に対し、それらを「いい仕事を……」と言っていいのか分かりません。

ただ、人にとって最も重要な仕事は、生き延びること、そう思いました。

諸兄も私も生きてまたご一緒できますよう、「かく語りき」これにて閉幕。

sanjuna_profile+

秘密のサンジュナ: 子役として主演舞台を勤め、全国を周る
ロングラン十数年目にして未だ子役の「万年少年役女優」

音楽制作ユニット「LUNATICA」主宰
半世紀に一度復活するバンド「LUNA MONSTER」のボーカリスト。
YouTubeにて「自爆マニア」「魔女っ子BABY」の音源を公開中。

グラビア画像集「秘密のサンジュナ」
他DVDコンテンツは、Amazonにてお買い求め戴けます。

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